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箱庭にはなれない

現パロ甥叔父アルクラ フォロワーさんとの推しカプすごろく中に盛り上がって頂戴したネタ。

現代に転生して先に記憶が戻ったクラウス叔父さんと遅れて記憶を取り戻した甥っ子アルトの話。

 

「いつからですか——」

隊長、と続けそうになって止め、叔父さん、と言うのも淀んでしまう様子をクラウスは楽しく見ていた。まだ上手く状況が飲み込めていないのだろう。5分程前まで可愛い甥のつもりでいた彼は可哀想に、目の前に置かれた好物の特製グラタンスープにさえ、手を付けられないでいる。

漸く整い始めた2人の生活空間が、一気に贋物に成り果ててしまった。可哀想にと、クラウスは心の中で何度も憐れんだ。憐れむと同時に面白おかしくもあった。

頭の中にある遠い記憶。それによれば彼等は上司と部下、そして敵同士だ。塔の頂での出来事を、非日常を今でも思い出せる。街の焼けるその匂いまで。

いつから?初めからに決まっている。君が親に連れられ、甥として私の隣に座り、勉強を教えてほしいと頼んできたあの日から——

そう突き付けてやっても良かった。良かったのだが、

(お前は、エルクレストではないのか)

僅かに対峙する間、彼がただの【アルト】でしか無い事が、何故か分かってしまった。彼の中に心から憎んだかつての親友は、一ミリも存在しない。

舌打ちしかけて啜った珈琲のぬるさと苦味が、急速に感情を削いでいく。

赤子の様に駄々を捏ねても、記憶は過去の物で仕方のない事なのだ。

だからクラウスは、やり方を変えることにした。

「混乱するのも無理はないね」

あくまで叔父である事は捨てずに、優しい声で、

「安心すると良い、此処にはもう戦う理由……天使も、神もいないんだ」

いつかと同じ調子で、そうすればこの子供は絆される。

「私も君も、叔父と甥である事に変わりはない」

インターホンが鳴る。注文していたカウチが届いたのだろう。

「早く食べてしまいなさい、アルト」

午後は模様替えを手伝って貰うよと告げて、席を立つ。

住人が一人増えただけでも、何かと物入りだ。



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