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月の王宮ごっこ

alto+xeno

 

 その王冠は、壊れた時計とばらばらに散らばっていた天使たちの骨で出来ていた。砕いた短剣の破片で飾り付け、王の戴に燦然と輝く。

 戴冠式は厳かに無限の闇と死に絶えた星の光の下おこなわれた。二人きりの、人も天使も神ですら死んだ世界。静かな、静かな景色が、かつての指揮者と王の向こう側に広がっている。


「やっと、全てが、静かになったよ」

 王は安らかに言葉を紡ぐ。この世の何よりも穏やかな声音に、楽譜の奏で手だった少年も微笑みを返す。その眼はもう英雄の物ではない。

 在るべき筈が無い二人だった。何が切っ掛けだったのか推し量る人間はもういない。恐らく確かにそこには少年の、【彼】を救いたいという意志があったに違いないのだけど。


「貴方が穏やかでいられることが、俺の喜びです」

 そう言って少年は、王の手を取り甲に口づけを落とした。

「ずっとお側に、陛下」



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