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朝陽撫でる君

elcxeno

 

正装で大きな姿見の前に立つ友は、いつもより凛々しく見える。シンプルなシルエットだが布地には細やかな刺繍が施されていて、しかしそれは外套によってほとんど隠れてしまうのだから、贅以外の何物でも無い。

「可笑しくないだろうか」 自嘲すら含んだ顔で振り返るその姿は、陽の光を受けてとても綺麗だった。いつだって彼は綺麗だ。けれどありのままそう伝えれば妙な空気になる気がしていて、

「お前だけの為に誂えた物だろ?可笑しい事なんてあるものか」

大抵は口を噤むかこんな風に当たり障りのない言葉を紡いでしまう。人の心が望む物を、望まれるままに与える事は、難しい。

そんなエルクの胸中を他所に、友は言われても尚、袖口や胸元のレースの乱れを気にしている。彼を飾る装飾品が、触れ合う度に音を立てて笑った。微かな旋律はまるで祝福のようで、この良き日、この新たな朝に相応しいとエルクは思った。

椅子の背に掛けられた天鵞絨のガウンを手に取ると、隣に並び立つ。 落ち着いた深い紅はレグナントの色だ。それを纏って友人は王の顔になる。

「では、そろそろ参りましょう。陛下」 冗談めかしたエルクの言葉に、彼は苦笑しつつ姿勢を正してみせた。

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